設計のこと

昔ながらの造り方をする木造『石場建て』も、現代的な造り方の木造も、はたまたコンクリート造も鉄骨造も好きです。今は主に木造に携わっていますが、どれが一番優れているなどではなく、他にはないそれぞれの良さ・美しさがあると思っています。

設計事務所所員時代は多様な構造のミニマルなデザインの仕事が多く、工務店時代は木造の伝統構法による『石場建て』にどっぷりとつかりました。タイプの違う建物やデザインに触れてきたことは、自分の好みの幅を広げることにもなりました。つくるものの見え方や種類が違っても、共通してある “潔さ”という部分に私は魅力を感じているのだと思います。そしてそこに遊び心を少し加えることを楽しんでいます。



『石場建て』で建てる建物は、主な材料が「石・木・土」と簡素で、手仕事を介した気持ちのいい空気が工事中からも漂います。構造に関しては地震力に対して抗うというよりは受け流すという性質があり、ものの在り方自体に無理がなく姿勢がいい人がゆったりと立っているような印象です。

各地で事例は増えてきてはいるものの、まだまだ知られていない構法です。実際には選ばれなかったとしても家づくりの選択肢の一つになればいいなと思いますし、おもしろいと思っていただける方とは、同じくこれをおもしろいと思うつくり手と一緒に家づくりに携われたらと思っています。



古民家の改修工事のお引渡しの際、ここで過ごしたこれまでのことに思いを馳せられていた施主のお姿が目に入りました。新築とは違うひとつの選択肢としてある、「残す」ということがもつ力を感じた時でした。私は残すための設計をしているわけではないのですが、将来世代や事情が変わっても使い続けたいと思われた時、それに耐えうる建物になるよう心がけています。